ams

a tokyo based manicurist, hatsuki furutani's salon works from a.m.s. ebisu place in shibuya

2013-01-14

古谷葉月の奇妙な果実 ランカウイと懺悔

a.m.s.恵比寿プレイスです。

こんにちはー。今日のネイルは南国の果物を半分に割ったら、触ると皮膚がかぶれる粘着質に包まれた黒い種子が入っている。


さて、南国繋がり、わたし解説者マサ子(仮名、38歳)はマレーシアのランカウイ島に行ったことがある。正確には、ペナン島に行ったので、近くのランカウイ島に日帰りで出かけてみた。ペナン島からフェリーに乗ると、フェリーの中では小さなテレビ画面でインド映画が上映されている。フェリーの一番安い席だったので、船底の席でほとんど景色は見えず、エンジンの音が煩く、燃料の匂いが充満しており、フェリーが出発して15分もたたないうちに、皆船酔いをし、ゲロゲロになり、会話も少なく、静寂の船底にはエンジンの音が煩く、燃料の匂いがますます充満し、テレビの画面からインド映画の陽気で妖しいオリエンタルな音楽だけが空しく3等席に響き渡る。ランカウイの港についたら、タクシーに乗って、島の反対側にある美しいビーチを目指す。ビーチには私の他には、いわくありげな西洋人の年の離れたカップルしかいない。あとは、やる気のない地元の物売りが数名いて、ビーチの日陰にある食堂で時間を潰している。

一日その美しい奇岩の見える美しい遠浅のビーチで泳いだり、ごろごろしたりして、さあ十分遊んだので、ペナンに帰ろう、と思って さて港に戻ろうと思ったんだけどさ、戻る手段がないじゃん。ランカウイの港にはタクシーがいたけど、この美しい人里離れた遠浅のビーチにタクシーがいるはずもなく、西洋人の年の離れたカップルは知らないうちにいなくなり、食堂の物売りはそこらに住んでいるようで、車を持っている風もない。たむろしていた何組かの家族連れももういない。食堂の脇に何台か車が止まっているけど、その周りにいるのは、色が浅黒い、インド人なのかアラブ人なのかわからないけど、髭を生やし目が落ちくぼんで彫りの深い屈強な男性が数名たむろしている。

さて。とにかく、港に戻らなければいけないんだけど、タクシーの電話番号はわからないし、周りに自分と同じような旅行者もいないし、女性の地元の人や、家族の地元の人もいない。だいたい、車を持っているのは、4人の色の浅黒く彫の深い屈強な、私から見ると、さも恐ろしげな男性達なんだけど、これ運命の分かれ道。私は、その人達に港まで載せて行ってくれないかとお願いをしたところ、快諾され、彼らの車に乗って港まで帰ることになった。無言の車内。運転するドライバー。助手席の私。後ろに3名の男。無言。どこから来たのか?・・・日本。・・・・・日本のどこか?・・・東京。マイフレンドがオオサキにいるよ。・・おーそうですか。無言。現地の言葉で話し合う男たち。そうこうする間に、車は人里離れた1本道を進む。田園、牛。林。人家はなく、ますます港からは遠のいているような気がする。心なしか、てか明らかにどんどん人里離れている。無言の車内。4人の現地の男。1人の日本の女。これ、まずくないか?明らかに、港の方向じゃないし、遠回りしてるし、人里離れてきてるし、ああ、お父さんお母さん先立つ不孝をお許しください。私はきっとこのまま身ぐるみ剥がれて殺されるんだろうなあ。よくそういう日本人女性の旅行者たまにいるしなあ。これ、いつ、身ぐるみはがされるのかなあ。とか思って、かなり身を固くして無言のまま無愛想に車の中に乗っていたんだけど、どうもその兆候もなく、なんか人里は離れたなりにショッピングセンターとか寄ったりして、買うものある?とか言ってくるんだよね。でも、どう考えても往路の3倍以上車乗ってるし、遠回りしてるし、人里離れてるし、もうよくわからない。結局、港まで何事もなく無事送ってもらって もう私は頭の中がクエスチョンマークでいっぱいだったんだけど、とにかくお礼をしなくちゃいけないから、お金を払えば良いのかしらと思って、お金を渡そうとしたら、彼ら

いいいいいいい、いらないお金なんて いいのいいの いらないから

ええ でも申し訳ないし送ってもらって

いいのいいの いらないから 本当に いらないから

て、4人が4人、口をそろえて手を振って同じようにお金をうけとらないの。でも、時間とらせちゃって申し訳ないし、と言ったら 君は遠くからわざわざ来たんだから、ランカウイの島を色々見てもらいたかったんだよ。

って言うわけ。そこまで言われたら、お金は渡せないよね。でも、私、本当に疑ったりなんかして、申し訳ないことをしたと思って、本当に、申し訳なくて自分が恥ずかしく、もうこの話10年も前の事なんだけど、今でも心底申し訳なく思うよ。そういうわけで、ランカウイの優しい4人の男性の方々、この場を借りて懺悔するとともに、改めまして御礼申し上げます。

まあ、そういうわけなんだが、良い子の皆さんは決してマネをせず、ヒッチハイクなんかしないで、必ず行きのタクシーのドライバーの名刺をもらって、帰りはそのタクシーを呼んでお家に帰るように。いやまあ、そういうわけで、マレーシアはホンマ良いで~。

それでは。