こんちわ。お土産に果物を買った、とかお土産に桃を買った、とか言うより、手土産に水菓子を誂えた、とか、角の水菓子屋の店先の籠に水蜜が並んでいて実に美味そうだとか、なんか昔の小説を読むと、果物じゃなくて水菓子、桃じゃなくて水蜜って書いてあるよね。実際問題、明治時代や大正時代よりも今の方が果物の品種も改良されて甘くなってるだろうし、輸入の果物も豊富にあるだろうけど、何か水菓子とか水蜜とか言われるとそっちの方がぜひとも、パナマ帽をかむってステッキをついて麻の着物を来た色男の正太郎おじさんの手土産に頂いてみたくなるけど、実際明治時代の果物なんか食べたら酸っぱくて鼻の下と脇の下が発汗しそうだ。
これなんかは正によく熟れた水蜜を半分に切ったらジューシーな果汁と果肉が産毛について、実に美味そうだ。
元祖は、芍薬色の牡丹のグラデーションとか、孔雀のグラデーションとかだね。
一方こちらは真夏の南国系だね。マンゴー、パパイヤ、パイナップル。君たちキウイパパイヤマンゴー的に言うとフルーツスキャンダルなわけだね。この言葉のアヤと趣きのわからない若いお嬢さんたちは会社の先輩方に聞いてみなはれ。夏の暑い気怠い午後に暑さでぼーっとしながら、包丁を使わないで手で皮を剥いてそのままかぶりつくと、果物の産毛と糖が口の周りについて痒くなるけど、食べ終わったらそのまま手も洗わないで口の周りも拭かないで昼寝する。
そういえば昔スリランカに行ったことがあって、もう頼まれてもないのにスリランカ観光大使になるけどさ、とても素晴らしいところでまたぜひ行きたいと思ってるんだけど、そのスリランカで、仏教のお寺に行ったわけね。まあ日本でも同じだと思うけど、その仏教のお寺も山の上にあって、石段を登ってくわけね。山寺の石段の両脇の植物って、日本だったら、桜だとか杉の木だとかが植わってるんだろうけど、やっぱ本場南国だけあって沙羅双樹とかリアルに生えてるわけね。あれって極楽浄土にしか生えてないのかと思ったら、本当に現実に生えてるのね。そんで、実のなる木は日本だったら梅の木とかだろうに、スリランカは沙羅双樹の木の隣にマンゴーの木が生えてて、あたかも日本で枇杷に実がなるみたいに、普通にしれっとマンゴーの果実が実ってんのよ。コワモテの髭のガイドのおじさんが
ほれ あそこにマンゴーが実っとる。
とぴくりとも笑いもせずに教えてくれたのね。あたしマンゴーなんて実ってるの見るの始めてだし、めずらしいし、ああやっぱ南国ではこのように日常生活に根差して実に普通にしれっとマンゴーが実るもんなんだなと感慨深かったので、お互いカタコトの英語だけど思うところを伝えたくて
わたし:日本 ここより寒い。たまに雪 降る。
おじさん:へえ。日本 雪、降る。寒いとこ住めない。
わたし: 寒いから 日本 マンゴー 生らない。
おじさん:日本 マンゴー 生らない!
て 驚くからさ、
わたし:日本 南の方 取れるマンゴーあるが、一個何千円とかする。非常に高い。
て 弁解したら
おじさん、心底あきれて憐れむような信じられないといったような顔をしてた。
そうなんです、日本は南国のフルーツが高価な国なんですよ。バナナが高級果物であった時代からの伝統なんで勘弁してやってください。
それでは。