ams

a tokyo based manicurist, hatsuki furutani's salon works from a.m.s. ebisu place in shibuya

2013-06-28

暗闇 滂沱の涙 ドキドキと心拍 

a.m.s.恵比寿プレイスです。

こんにちはー。今日のネイルは何だろう?涙が流れるのか、心拍数なのか、キリマンジェロの山頂の雪が解けて川となって私に呼びかけるのか。


わたし解説者マサ子(仮名、38歳)は、もうええお年になってきたので、色んな事が恥ずかしくなくなってきた。産婦人科に行くのも恥ずかしくないし、写真写りが悪くてもあんまし気にならないし、その日の服がちぐはぐのコーディネートでもあんまり気にならない。これを以ておばはんになってきたと言うのかな?と思ったけど、思い返してみるに、そんな事、二十歳の頃から恥ずかしくなかったかな?っていう気もする。二十歳の頃は恥ずかしかったけど、今は恥ずかしくない事つったら あれだね 映画館で号泣しても恥ずかしくないね。むしろやりきった感の満足度が高い。こないだなんかさ、オペラの椿姫が映画化されているヤツが上映されてたから、見に行ったんだけど、もう半分くらいずっと泣いてたからね。もうさ 悲しくてやるせなくてせつなくて もうなんつーのこの運命の不条理とアルフレードを愛するが故に身を引き パリで独り寂しく死んでゆくヴィオレッタ、残りわずかな命をささげたのに、あゝお父様、あゝどうぞこの不幸な女がいることをお忘れにならないで あゝ愛しいアルフレードわたしが死んでも幸せになってねこの胸のペンダントをどうかあなたのお綺麗な花嫁さんにsdふぉいあえううわあああえwふぁうぇぇsぇぇぇ 滂沱の涙。号泣。俺が。てか、あんたが泣いてどうすんだと。もう、なんか途中からずっと泣いてんの。俺が。終わったころにはもうやりきった感と充足感で満足しきってんのね。わたしが。何であんた見てただけなのにそんなに達成感いっぱいなのかと。他に泣いている人もあんまりいなかったしねえ。でも、もうメロドラマ見て映画館で泣いてても全然恥ずかしくないんだよね。椿姫の前にさ、「溝口健二の残菊物語」を見に行ったんだよね。これも椿姫とあらすじはおなじでさ、身分の違うカップル、男は歌舞伎役者のボンボン菊之助、女は奉公人のお徳さん。お徳さんが菊之助の父親であるところの菊五郎に言い含められて身を引き菊之助が故郷に錦を飾る頃には胸の結核が悪化していて、一人淋しく死んでいく。っていうような話なわけで、観客は私以外ほとんど青年~中年~熟年~前期/後期高齢者の男性だったんだけど、映画の最後で菊之助が故郷に錦を飾り船乗り込みでご贔屓衆に挨拶をしようというのに、不幸な糟糠の妻、お徳さんは あゝ時遅し、肺を悪くして死んでしまう・・・・・所で、なんかもう映画館全体が ずびずび言ってむせび泣いているんだよね。大の男がみんなずびずび泣いてんの。もちろんあたしも泣いてんだけどさ。あ やばい私だけ泣いてる静かにしなきゃとか思ってるうちに、もうみんなさざめくように泣きだして、暗い客席のどこからともなく 夜の森のざわめきが山や森を震わせるように、みんな地の底から泣いてるんだよ。これは何か妙に連帯感があったよね。

それでは。