湖っていうと2種類あるね。恐ろしい湖と美しい湖。
恐ろしい方は我が日本国で言うと、犬神家の一族スケキヨのたぁたぁりぃぃぃぃじゃ～～～湯殿山麓呪い村あああああ～～～の系列で、事情を知らない都会からの部外者が山に閉ざされた村落を訪ねるとそこには曰くのある近親婚を重ねる一族がいて、屋敷の中にはまだそこに生暖かい人気のある座敷牢があって、ふと廊下に気配を感じて見ても誰もいない。ふと物音がして振り返っても障子に影が通りすぎるだけ。ふと物音がして開かずの部屋の屏風の影を覗くとぎゃあああああああーーーー！ケロイドに崩れた顔を白い仮面で隠した青年がっっーーー ていう湖からスケキヨの足がにょきっと出るのが我が国の怖い方の湖ね。あたしだって本当はよく知らないけど、とにかく40代の人と湖に行ったらてそんなこともないと思うけどとにかく風呂とか湖とか海とか水気のあるところにいったら、裸で水に入って逆立ちして足だけにょきっと水面から出して すーけーきーよーー！！ってやると猛烈に当たりが良いことは後進のためにもお伝えしておこうと思う。で、洋の東西を問わず、恐ろしい湖は米国にもある。「ここで泳ぐべからず」って看板の立ててある湖の畔の森のロッジで、夏にキャンプをするいわゆる「リア充」のアメリカ人大学生達がその禁を破ってきゃあきゃあ言いながら昼間湖で泳いで、夜になって脱ぎ要員のおねえちゃんのシャワーシーンとそれに続くエッチなシーンが始ったら、これがロッジに鉈やチェーンソーを振り回しながら、ホッケーマスクをかむった例の彼が出てくる前触れであることは言をまたない。
じゃあ、美しい湖ってどんなんだろう。そりゃ色々あるよね。おおブレネリさんが住んでるスイッツランドの湖なんてきっと美しいだろうね。小ブレネリて出てこないけどいいの？大ブレネリでーす小ブレネリでーすみたいな漫談じゃないのかと思う。でもブレネリんとこはさー（呼び捨て）自分でも綺麗な湖水って言ってるしよっぽど綺麗なんだと思う。それとかなんというの？セレブの人たちがイタリア貴族のお城とか持ってる「コモ湖」（逆から読んでもコモ子。山本山コモ子。新手のハーフの女子アナ。）とかきっと美しいところなんだろうね。でもどうもそういう「美しい湖」って、乙女の像みたいのが立ってたり、竜の頭がついたバイキング風の遊覧船が行きかってたり、白鳥のボートがあったり、ホトリでお焼きとかイカとか焼いて売ってんじゃないかと思うね。だから、マサ子、コモ子、行かなくていい。田沢湖とかで十分なの。
でね、美しい湖ってこういうのじゃないかね。
どことも知れない切り立った山の向こうの大きな湖は、すがすがしい青色の空の白雲を湖面に移して、岸に寄せる漣は春の柳の芽のように柔らかで、広い湖面は透き通っているはずなのに、三尺も進めば白く曇った水色になって、森閑として音もない湖には、古代の牙を持つアンモナイトと黄色く巨大な蛤が波打ち際にたゆたって、漆黒の玉虫色にでらでらと光る鰻と赤い緋鯉だけが、ひらひら泳いでいく湖。
それでは。
