a.m.s.恵比寿プレイスです。
そういうわけで、前回までのあらすじはこちらとこちらなんだけど、アンドロメダ星の銀河波止場から人間の男はさようならも言わないで旅立ってしまったから、機械の女は男を乗せた冥王星経由山羊座航路の宇宙船が銀河波止場から旅立って銀河の星の最後の1点になるまで見つめて何も見えなくなってしまったら、やさしいあの人が待つ何一つ不自由のないセントラル居住地区の螺旋型の超高層50000メートルのアパートに帰らなければいけないから、心ここにあらず波止場の突端から歩いていると車に轢かれそうになったり、どこ見て歩いてんだこのアマとかチューバッカみたいな2.5メートルもある荷役奴隷に怒鳴られて、言葉もなく見返すと機械の女の目には涙がにじんでいて、屈強な男も言葉がない。波止場のビルの外に出てタクシーを拾うと、タクシーの運転手のアンドロイドはみな銀河系3万の言語を自在に操るから、お姉さんお仕事今帰り?アタシなんかもうこの商売30年近くやってますけどこの業界どこもみんな大変ですよ小泉さんの頃はまだよかったけどねえ最近は株も土地もみんなアレだからねえギリシャなんてデフォルトするんでしょう?アタシんとこはほら子供も独立したからいいけどチケットのお客さんなんかも最近はアレでしょうとか盛んに話しかけてくるけど、機械の女は言語回路を遮断しているから虚ろで何も聞こえない。
セントラル居住区の高級アパートに帰ってもやさしいあの人はまだ帰っていないから部屋は暗い。電気をつけないでベッドにそのまま寝ころんで窓から見える銀河系の星々、人間の男が宇宙船に乗って永遠に旅立ってしまった銀河の星々を眺めると星が涙で滲んでぼやけてくるから、もうこのままこうして、制御回路をすべて切って、アンドロイドの自己廃棄回路を作動させたら、きっとこのまま目を閉じる瞼の裏には人間の男を優しく包み優しく隠した銀河系が残ってそれも最後には闇につつまれ、何もなくなる。
それでは。