a.m.s.恵比寿プレイスです。
昔の記憶っていうのは、どうして昔になればなるほど白けて色が無くなって白い真夏の真昼なんだろうか。どうして町の色が薄く白けて色が無い感じがするんだろうか。小さい頃は夢と現実の境が明確ではなくもっと曖昧に行き来をしていた気がする。真夏の真昼の白けた商店街の床屋の前には10円を入れると主題歌を奏でながら上下に運動する仮面ライダーの乗り物があって、となりの洋品店の店頭にはサッカー生地の子供用の浴衣が吊り下げられ、冷房の効いたメガネ屋と演歌歌手の総合体育館での公演日程の書かれたポスターやアイドル歌手のサインが描かれたポスターが貼られたレコード屋の角を曲がって、中に桃缶の入ったバタークリームたっぷりのショートケーキも売る角のパン屋を超えてそのまま行くと、夢の中では白けた商店街が更に光に満ちて白けて海水浴場の砂浜に続いている。京浜地区の商店街が海水浴場に続くわけはないのに、夢から醒めて、実際に商店街を歩いている時もきっとその海に続く道はどこだったけかなと信じて疑わない。曖昧な部分もあるけどたぶんつながっているから今はよくわからないけど、きっとよく考えればその道にいけるとかなり大きくなるまで信じていた。
夏休みに海から上がると、太陽は頭上の目も眩む真上にあってぎらぎら暑いはずなのに、体はけだるく涼く暑さを感じない。心なしか海辺の町の色も薄く白けて色が無いような気がする。車に乗って、海辺の国道沿いの食堂センターに入ると入口のガラス棚には魅力的なメニューが陳列され、蝋でできたナポリタンスパゲティーには宙に浮いたフォークが添えられ、クリームソーダは涼やかにエメラルドグリーンの汗をかき、レモンスカッシュも爽やかに発砲し食紅色のさくらんぼが添えられている。
それでは。