いきなりところで、なんですけども、ところで皆さんは町や飲食店で有名人著名人芸能人の方々を見かけたことはありますか?だいたいそこら歩いてたらばったり、とか、新宿のつぼ八行ったらおお、なんてことはあんまりていうか全然ないよね。わたし36歳解説者は生まれも育ちも京浜地区、すなわち東京に生まれ落ちてこのかた36年住んでいるわけですけど、道でばったり著名人の方々に会った事はないですし、行動範囲が場末に限られるもんだから、新橋の歌えるスナックアミーゴに行くことはあっても、<西麻布の飲食店>に立ち入ることはありません。だから、昔、鉄板焼き食ってたら、もうもうのホタテのバター焼きの煙の向こうになんか見覚えのある同年代の女の人がいて、誰だっけかな。同期だったかしら。顔は覚えてるんだけどなー。どこの人だっけ?しかしああいうきれいな人あたしの知り合いにいたかしら? とか自分の頭の知り合いリストと照合してしまうくらい、テレビで見てばっかいたから、つい親しい気になっちゃったら初代リハウスガールの白鳥麗子様だったことはあります。知り合いだとか思っちゃって心よりお詫び申し上げます。
そういうわけで、ウチの父ちゃんなんかさ、昔「馬込温泉」ていう温泉が実家の近くにあってね、なんだか麦茶みたいな色の温泉が湧いてたんだけども、父ちゃんはそこに毎週日曜日つかりにいってたんだね。で、浴場に入って湯気がもうもうしてて、浴槽に入ろうと思ってふと見たらなんか知った人がすでに湯船につかってこっちの方を向いている。あれ?誰だったかな?と思ったけど、顔は知った人だけども名前が瞬時に思い出せない。どこで会った人かしら?こちらが挨拶しないで向こうもこちらを知っていると困るから、
ども、、
みたく 軽く会釈をしたら、その人も
ああ~ どうも。
みたく、当然、相手がこちらの事を知っているような会釈を返して来たんだそうな。それで、その人の近くの湯船につかって、並んで浴場の入口を見てたら、入ってくる人がみんな その人を見て あれ?あの人誰だったかな どっかで会ったんだけど名前がほらえーと第一産業の馬淵さんだったかしら?どこで会ったのかしら?こちらが挨拶しないで向こうもこちらを知っていると困るから、みたいな微妙な ども、、っていう曖昧な会釈をして湯船に入ってくる。そのたびにその人は あ~ どうも。みたいな会釈を返しているらしいんだよね。
そりゃーそうだ。みんな寅さんのこと知ってるもんね。もちろん、寅さんはこちらのことは知らないんだけども、こっちはみんな寅さんいたらなんか知った人に会った気になってつい挨拶しちゃうから、寅さんも湯船の中から全員に会釈を返していたらしい。寅さんくらいになるともう日本の風景のサブリミナルみたいなもんだから、日常風景の中に紛れてたら風景となじんでしまってみんな自然に挨拶しちゃうらしい。新橋のSL広場の前にお父さんを一人解き放ったらすぐまわりの風景の一部になっちゃうから、わからないでしょ?とはちょっと似て非なるか。
ことほど左様に、あまりにも小さいころからスクリーンやブラウン管の向こうで慣れ親しんだスターが目の前に現れると、なんか、自分の知り合いに会ったような勘違いを起すらしい。そこにくると、私の知り合いが昔吉祥寺で働いていて、近所に楳図先生の事務所があったようで、よく先生をお見かけしていたようですが、やっぱり、先生くらいになると、誰だったかな?とか知り合いだったかしら?あら名前が思い出せないわ。ああ!お父さんが新橋SL広場に解き放たれしまってサバンナのインパラのように風景に溶け込んで見失ってしもうたとかそういうことは皆無のようです。ああ、今日も先生がいらっしゃるな、とかお見かけしましたよ、とか、吉祥寺の風景の一部ではあるものの、それでもやはり寅さんのように風景に溶け込むサブリミナルはないようです。
だから、そういうわけで、だからお願い今はあなたしか愛せない。これをロックなネイルと言わないで。
それでは。